読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Chanmanの日記

作家と読書とセルフコーチングのブログ。 私の作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しております。

小説の続き

小説家になろうカクヨムに新しい話を追加。

 

主人公最強はとっても痛快だが、ただの最強だと面白くない。

 

ということで主人公最強だけど主人公成長の物語を書いている。

 

はてなに載せるべきかどうか検討中なり……

 

 

 

 

意外と見てくれてる

あまり更新をしていないのに見てくれてるのはうれしい限り。

 

今度からは小説も書いていくのは変わりない。

 

乞うご期待!

とりあえず完結、次の小説へ

魔女狩り、ダメ、絶対は完結です!

 

私が初めて描いたライトノベルでした。

 

感想いただけたらすごく嬉しい。

 

ま、話は変わりますが、今書いてる小説もかなり気合入ってます。

話もどんどん膨らませようとも考えてたりしてますね!

 

自分の中にもっとインプットして話のタネをもっと投入します!

 

 

安住の地

 ーー冬の前触れ

 

 切り取られた絵を見れば、誰もがそう名付けるであろう光景が、目の前に広がっていた。枯葉は膝の上の高さまで降り積もっている。

 

 命の輝きを迸らせる初夏を迎えようとしているのにもかかわらず、季節外れの光景が絶望を感じさせる。

 

 息をしているかもわからない、消えそうな命をにそっと呼びかけた。

 

「アリス、着いたぞ! どうしたらいい、どうしたら君を! この地を救える?」

 

 ロビンの呼びかけにうっすらと目を開ける。

 

「ロビン……おまじない、お母さんとの約束」

 

「ああ、わかってるよ。どうしたら……

 

 弱々しく指差す場所はいつもアリスがおまじないを行う場所。枯葉を押しのけながら、その場所へ向かいアリスをゆっくりと地面へと下ろす。そして奪い返したおまじないをアリスへ渡した。小瓶のなかの光は輝きを失わず、ぬくもりを感じさせてくれた。

 

 アリスはその小瓶を愛おしそうに胸に抱きしめ、コルク蓋をあけようとするが力が入らないため、開けることができなかった。小さなアリスの手に自分の手を重ねると、アリスはこちらを見て、小さく頷く。そして一緒にコルクの瓶を開けた。

 

 綺麗な小川があった場所へと小瓶の中身を傾ける。ゆっくりとその光は川底だった部分に注がれる。

 

 ああ、これでこの土地が救われる、そう思った。

 

 しかし、アリスは空を見つめ、涙を流しながら言った。

 

「ロビン、私を見つけてくれて、ありがとう」

 

「私にご飯を食べさせてくれて、ありがとう」

 

「私と一緒に遊んでくれて、ありがとう」

 

「アリス……?」

 

 アリスは続けた。

 

「私を温めてくれて、ありがとう」

 

「ロビン……私を愛してくれて、ありがとう」

 

 今までに見たことのない、太陽のような笑顔を向けてくれた。

 そして、小さな光がアリスの体からポツポツと出てくると、その光はアリスの体をゆっくりと旋回していた。

 

「ア、アリス。まさか!」

 

 命を賭して、母との約束を守ろうとすることを知ってしまった。アリスの肩をつかもうとするが、その手はアリスの体を通り過ぎ、空を掴んだ。

 

「ねえ、ロビン。アリスね、ロビンがいてくれたから思い出せたよ。お母さんが教えてくれた、おまじない」

 

「だめだアリス! 死んだらだめだ! アリスが犠牲になることはないんだ! 約束したろ? もっとたくさん遊ぼうって、たくさんご飯食べようって! いろんなとこに旅しようって!」

 

 いくら必死に訴えてもその光はだんだんと輝きを増し、アリスの姿を見ることができないほど、強く、眩しく輝いていく、命を芽吹かせる太陽のように。

 

「だから、アリスね。ロビンにも、おまじないしてあげたい」

 

「えっ……

 

 

ーーロビン、愛してる

 

 

 アリスは胸に抱きつくように飛び込んんでくる。それを受け止めるように腕で受け止めようとするが、アリスの身体に触れることはない。だが、触れずとも感じることができる、暖かい命のぬくもりを。

 アリスの頬はうっすらと紅潮し、照れたように、だがしっかりとこちらの目を見つめていた。それに応えるように言った。

 

「ああ、俺も愛してるよ」

 

 アリスはニッコリと微笑むとそっとその小さな唇をロビンの唇へと重ね、優しいぬくもりを残しながら消えていった。

 

「アリス……!」

 

 再びアリスに触れることは叶わなかった。地面に積もった枯葉を握りしめる。愛おしさが溢れてくる。握りしめた枯葉からはクシャリと乾いた音がした。握り拳に自分の涙がこぼれ落ちる。その涙は乾いた地面へとしみ込んでいくが、すぐに乾いてしまった。

 

 じわりと地面が湿っているように感じたのは自分のこぼした涙だろう、そう思った。しかし次第にその湿り気は、膝へと伝わっている。それまで乾いていた地面の色が湿り気を帯び、そして一つの筋を描きだした。だんだんとその流れの勢いは増していき、アリスが光となったその場所からは、命の源が湧き始めていた。

 

 一つの命が絶え、沢山の命が産声をあげる。

 

 その水に触れた枯葉は柔らかな腐葉土へと変化し、小さな芽吹きを迎え入れる。小さい、それでもゆっくりとその若草色の芽吹きは目の前へと広がっていく。枯れた木々がからは水を吸い上げる音が聞こえくる。枝からは新緑の葉が陽の光を受け眩しく輝き始めていた。

 小さな命が紡いだこの世界はあまりにも美しすぎて、その言葉は自然とこぼれ落ちていた。

 

「ありがとう」

 

 その言葉に応えるかのように、優しい風がそっとロビンの頬を撫でた。

 

***

 

 アリスが森となって数ヶ月が立っていた。

 短い時間だったかもしれない。アリスと過ごした日々を回想するたびに胸に熱いものがこみ上げてくる。

 アリスと過ごした小屋の中は元どおりとはいかないが、綺麗に片付けることができた。今では定期的に来て窓を開け、風を吹き込ませる。

 

 アリスが残した命の源泉は大きな流れとなって、この土地を、そして村を潤わせてくれている。村のみんなはこの場所を大切にしようと代わる代わる管理をしてくれている。そしてその源泉の周りに供えられる花が絶えることはなかった。

 

 カレンからは泣きながら反対されたが、ロビンは村を出て旅を再開することにした。一年に一度、アリスが森になったその日、必ず戻ること約束をして。

 

 ロビンは今日、お別れに来たのだ。

 

 名残惜しくもある。

 この土地にずっと住んでいようとも考えていた。

 しかし、アリスと約束したその山へ、その海へロビンは行こうと思った。アリスと旅をしていると思えば、いまだにつきまとう悪夢は消えると思っていた。

 

 アリスとの思い出を惜しむかのように、光を再び取り戻した庭の中心にある小屋を見つめながら、後ろ歩きに庭を出て行く。

 

 庭を出たところで、少しため息をした。なんとなく、そこにアリスがいるように思えていった。

 

「ありがとう、愛しているよ。それじゃあ、またな」

 

 小屋を背に、新しく出発しようとした時だった。ふわりと優しい風が頬をなで、ふと後ろ髪を引かれるように振り向き、小屋を見つめた。

 

 アリスが見送っているような気がした。

 

 何を期待していたのだろうか、未練がましい自分に呆れ、地面に視線を落とし、大きくため息をついた。気を取り直し、目を開けた時だった。自分のものとは違う小さな両足が見えた。

 

 ああ、あまりにも憂鬱が度を過ぎると幻覚まで見てしまうのか、と自分の情けなさに呆れてもう一度ため息をつく。

 

 よし、と気を取り直して視線を上げれば、そこには日の光を反射して風になびく長い銀髪、美しいルビー色の大きな瞳がロビン見つめていた。照れたように頬を染め、満面の笑みを浮かべていった。

 

「ロビン、ただいま!」

 

その日、ロビンは旅することをやめた。

 

お・わ・り・!

 

 

 

 

 

魔女狩り 2

 閉じられ瞼に日の光が容赦なく差し込んできた。眩しさに顔を顰め、ゆっくりと体を起こす。ぼんやりと視界を取り戻し、頭を左右に振り、状況を確かめるとロビンは自分の部屋のベッドで眠っていた。ベッドの脇にはカレンが椅子に座り、頭がこくりこくりと動いていた。

 

 上体を起こしたことに気がついたのか、カレンもゆっくりと目を覚ました。

 

「……あ、ロビンさん、おはようございます。体のほうは大丈夫ですか?」

 

 心配そうに優しく声をかける声にだんだんと頭が冴えてくる。ハッとしてベッドから飛び起きカレンに噛み付くようにアリスの居場所を問いただした。

 

「アリス! アリスはどこにいるんだ!」

 

 カレンは一瞬、驚いた様子を見せた。

 

「ロビンさんは本当に魔女に操られているんですか?」

 

 その目は涙を浮かべていた。

 

「いや、俺は正気だ。それにみんな勘違いしている! アリスは……魔女は何も悪いことなんかしていないんだ! あの子はただ健気に、この土地を、この村のために母との約束を守っきただけなんだ! どこだ! どこにいるんだ! 早くしないと取り返しのつかないことになるんだぞ!」

「え!」

「カレン、聞いてくれ……本当にこの土地や村はアリスの魔法で豊かになっているんだ! もしそれを止めてしまっては何か取り返しのつかないことになるかもしれないんだ!」

「私どうしたらいいかわかりません、ロビンさんの言っていることも、領主様の言っていることも……」

 

 優しくカレンの両肩に手を当て、優しく語りかけた。

 

「村のみんなに伝えてくれ、アリスは悪い魔女なんかじゃない。むしろ、どこにでもいる女の子なんだ。その子が使う魔法で、この土地は潤っているんだと、豊かなんだと」

 

 カレンの表情からはまだ疑いの思いが見て取れる。

 

「正直に話すよ。時々村をあけていたのは、魔女と……アリスと生活を共にしていたんだ。生活してわかったんだ。彼女は、どこにでもいる女の子なんだって」

 

 初めて出会ったときのこと、それから二人で過ごしたことをカレンの脳内に写し込むかのように語りかけた。 

 

 その真剣な眼差しにだんだんとカレンの表情が和らぎ、頷いた。

 

「わかりました。ただ……」

「ただ?」

「私にも……構ってくださいね」

「へ?」

 

カレンの発する声はとても小さく聞き取りずらかった。

 

「い、いいです! 行ってきます!」 

「ありがとう」

 

 カレンは扉を開け、颯爽とかけて行った。

 

***

 

 ロベルトの書斎には、領主の男、そしてその護衛、カレンが今後のことについて話をしていた。

 

「あの少女はどうするのです? もうかれこれ1週間は過ぎたと思うのですが……」

 

 苛立ちが隠しきれていない様子のロベルトの表情は、今すぐに村から出て行けといわんばかりだった。

 

「ふふん、そうあせらずとも、村長さん。あの魔女は非常に有効です。しっかりと調教を行う必要がります」

 

『調教』という言葉を口にしながら、ニヤリと下品な表情を見せる。

 

 ロベルトは今すぐにでも魔女を、自分の実の娘を助けに行きたい心境だった。

 村長という立場上、自分の娘が魔女であったということは明かすことはできない。

 そして魔女の森へ入ることを禁止してきた。

 この村に混乱をきたし、自らがこの村の秩序を乱すようなことはできない。それに今はカレンというもう一人の娘もいる。

 

 魔女の虚構の恐ろしさを植え付けたのも自らの責任である。「魔女があの森にいる。近付いてはならない」というお触れが出てて以来、魔女には根も葉もない恐怖が付加されていった。

 以前、どこの子どもなのか、見かけない女の子が村の子供達と遊んでいたという話があった。それ以来からか、魔女の存在がおぼろげながら村に恐ろしい存在として浸透していった。

 

 しかし、一人の青年が、その存在を確かなものへと昇華していた。

 生存は絶望的と思っていたのだが、心が躍るような思いだった。やっと、会えると思った矢先、欲にまみれた男が、親子の再会を阻むのだった。

 そして、年端のいかない自分の娘をひん剥き、縛り、閉じ込めた。

 

「お、おとうさん。領主様しつれいですよ!」

 

 怒気をはらんだ声色にすぐ隣に立つカレンは普段とは違う、いや異常とも言える義父の様子に怯えつつも、ロベルトの言葉の端にはる棘を指摘した。

 

「しかし、カレンさんのおかげで、ロビンの異常に気づくことができ、魔女狩りはスムーズにことを運ぶことができそうです、ご協力感謝します。」

 

 そう言って、扉に向かうときだった。バンッ! と勢い良く扉が開いた。呼吸を乱して、突然部屋に入ってきたのは、村の農業を取締まる男だ。テーブルの上にあった、コップの水を一気に飲み干すとその男は鬼気迫るような声をあげた。

 

「いったいどうしたんだ」

「そ、村長!! 畑が、作物が腐っています!! それも……ぜ、全部です!!」

「なに!?」

「えっ?」

 

 その場にいる一同がそれぞれ驚きの声を上げた。目は見開き、信じられないという表情をしていた。

 

「それだけじゃない。周りの綿花も、野花も、ただの雑草もみんな、一斉に枯れ始めたんだ」

 

 男は今まで注いだ努力、そして過去に例を見ない異常な事態に困惑し、涙を浮かべている。

 農作物に関しては一切の責任を負っているため、その重責を免れ得ないだろうという不安感からか、今にも泣き出しそうな表情をしていた。

 

「一体……どういうことなんだ……」

 

 ロベルトは思考を駆け巡らせながら、深刻な状況を受け入れようとしていたが、あまりにも非現実的なことに理解が追いつかない。

 

「実は1週間ほど前から、野花が枯れているのを見つけていました。そのときは不思議なことが起こるものだなと思っていただけでした。しかし作物が枯れ始めたのは五日前ぐらいでした。さすがにおかしいと思っていた矢先、一晩あけたら、うっ……ううぅっ……」

 

 カレンは男の横に駆け寄り、肩に手を優しくのせ、心配そうな表情で見つめた。カレンはロビンの言葉をその場にいる皆にはっきりと伝わるように語り出した。

 

「領主様、おとうさん、ロビンさんは何か取り返しのつかないことになると言っていました。あの子、魔女が使う魔法はこの土地に魔法をかけていたと。だから早くあの子を……」

 

「ふふん、なるほど。つまり、魔女がなんらかの呪いをこの地にかけたということですね、はい」

 

 カレンの言葉を遮るように領主は言った。

 

「領主様……ロビンさんはあの子がこの土地のために魔法をつかって豊かにしていると言っていました。もしかしたらこの村は魔女によって生かされていたのかもしれません……」

 

 (まずいですね……)

 

 カレンの言葉を聞き、領主は焦りを感じていた。アリスを捕らえ、取り上げた魔法の瓶を部下に開けさせると、たちまち部下が若返ったのだ。

 それだけではない。部屋に生けてあったしおれた花もまるで今その瞬間咲いた花のようにその鮮やかさを取り戻したのだ。少なからずその部屋にいた領主自身にも影響があったのだ。その日の疲労が嘘のようになくなっていたのだ。

 

 このような素晴らしい魔法を失うわけにはいかない。もう既にこの魔法をどう使うかの計画は立ててある。死ぬまで魔女に魔法を作らせ、永遠にも近い若さを取り戻し、自らの欲望を満たす、素晴らしい計画を。

 

「ふふん、やはり魔女をころすほかありませんねえ、はい」

「なぜ、そう結論を急ぐのです! あの子にまた魔法を使ってもらえれば、この土地は元に戻る可能性だってあるのに!」

 

ロベルトは立ち上がり抗議の声をあげた。その声は怒気を孕み、今にも噛みつかんとする者だった。

 

「単純な話です。魔女がこの土地に魔法を施していた、それが今施されていないため影響が出てきた、ではその元凶を断てばその影響はなくなるという理屈です」

「しかし……」

 

 ロベルトは自制がきくきかないという瀬戸際だった。なんとか娘を救えないだろうかという思いで領主の言葉を遮ろうとしたが。

 

「いえ、もう時間がありません。この自体の責任は私がとらせていただきます。」

 

 領主が出て行ったあと、ドアが無情にも音を立てて閉じた。

 

「わたし、おとうさんのこと信じているから……ロビンさんのことも」

「ありがとう、カレン」

 

 部屋にはどうしようもなく佇む、村人たちの姿があるだけだった。

 

***

 

 目は目隠しで覆われ、口の中には匂いのする布を詰め込まれた。

 声にならないうめき声が、その布の隙間をすり抜けていく。

 両手を後ろで縛り上げられ無理やり引きづり回され、足を絡ませ顔から地面へと転んだ。痛みと恐怖心で泣き叫ぶも、誰も助けてくれない。

 

 金属同士が擦れあう不快な音が、背筋を這いずると同時に勢い良く放り投げられた。頭と固い何かが勢い良くぶつかり、鈍痛が体を強張らせた。

 カチャリと音がし、誰かの足音がだんだんと遠のき、静寂が訪れると、自らのすすり泣く声だけが聞こえていた。

 

***

 

 アリスを助けるには戦闘はさけられない。

 人を射るーー改心して以来、自らの愚かさを忘れるため、人を殺めることをやめ、避けてきた。今その枷を外すことは容易ではない。

 人が死ぬということに出くわすと、トラウマが頭の中を激流のように駆け巡り、割れるような頭痛が襲う。

 この後の戦闘を想像するだけでもズキズキと頭が痛むのだった。

 焦りは積もるばかりだった。部屋のどこを探しても、自分の愛用の弓、そして作りかけの弓すらも見つからなかった。

 村にある弓も使うことを考えたが、アリスを捕らえる際に村中の武器の類を集められ、未だ返却はなされていない。

 考えを巡らせた。一刻の猶予も許されない。今にももアリスは殺されてしまうかもしれない。

 

 コンコンーー窓から何か硬いもので叩く音がした。

 そこには真っ赤な赤い羽根をしたアリスの友人、フェニスがいた。

 

「フェニス……」

 

 名前を呼んだ途端、まるでついて来いと言わんばかりにロビンを見つめ返してきた。それに応えるように、部屋を出ていきフェニスの後を追うと、村の北東の門の上で静かに止まった。

 

「……そうか!」

 

 ロビンは颯爽と駆け出すのだった。

 

***

 

「様子はどうだった?」

「どうだったじゃないよ、まったく。可愛らしい顔が濡れそぼった目で台無しじゃないかい」

 

 ロベルトの質問に不機嫌そうに応える、小太りの女性はカレンの良き理解者であるおかみさんだ。

 

「はっきり言って、あの子は普通の女の子だよ。誰だい、あんな可愛らしい子を魔女だと言いふらした馬鹿たれは」

 

 珍しく落ち込んでいるロベルトの様子をみて、呆れたように大きくため息をついた。

 

「はぁ~。で、どうするんだい? 武器らしい武器は全部取り上げられてしまってるんだろう?」

 

「ああ、武器になるようなものはここにある農具や大工道具だけだ」

 

 机の上に並べられたのはどれもが使い古された道具ばかりだった。一部に鉄材を利用したものがあるが、そのほとんどが木材で出来ており、とても鋼の剣に対抗できるものではなかった。

 

「みんな、私に協力してくれるのか?」

 

 心配げに問うロベルトに村人たちは威勢良く答えてくれた。

 

「ああ、こうなったのも、あの領主という奴が来てからだ」

「はっきり言って、まだ信じられねえことや納得できねえこともあるが、あんたの頼みだ。従おうじゃねえか」

「あの子、村長の実の娘さんでしょ? だったら助けてあげなきゃ!」

 

 ロベルトは事の真相を村人たちに話したのだが、驚いた事に村人たちにはあっさりとその事実が受け入れられていた。

 村人たちは疑問に思っていたのだ。村の中を引きづり回され泣き叫ぶ女の子が果たして本当に魔女なのかと?

 想像していた魔女とあまりにも違っていた。恐れていたものがあまりにも拍子抜けするほど、はかない存在であったからだ。

 

 そしてカレンから聞いたロビンとあの魔女と共に生活した様子を聞く限りこの村のために魔法を使ってくれていたことは村の誰一人として疑う余地はなかった。

 

 戦える大人は70人。対して領主が抱える精鋭たちは鋼の剣で武装した15名。数では圧倒的に有利だが、こちらは戦闘に不慣れなものが多い。そして武器の圧倒的な能力差がこの戦いの勝敗を決定づけていた。

 

 すでに村の不穏な動きを察知してたかのように、領主は武器を収納していた小屋を、精鋭5人で取り囲み、常に睨みを利かせていた。

 

「しかし、武器がこれではな……」

「せめて弓でもあれば……」

「そうだ! 弓といえば、ロビンくんだ!」

「ああ! 領主が言っていたじゃないか。彼は英雄並みの強さだと」

「ロビンくんなら弓の作りかけを持ってるからそれで……」

「おとうさん!」

 

 勝機を見出しかけた村人たちの話を遮り、息を荒げ部屋に飛び込んできたカレンが言った。

 

「ロビンさんがどこにもいないの!」

「なに!」

「それだけじゃないの! 川が、水が……」

 

 そう言って顔を両手で覆い隠し、その場で力なく座り込んでしまうカレンを見て、その場にいるみんなが悟った。

 

 命の源である川の水がなくなったのだと、誰もが言わずと理解したのだった。

 この土地は魔女の、あの子の魔法なしでは生きていけないことを今知り、魔女狩りだと騒ぎ、あの小太りの領主にそそのかされたことを恥じるのだった。

 

 そして、皆が村長の判断を仰ぐかのようにゆっくりと彼を見つめた。皆の期待に応えるように静かに、しかしそれは腹のそこにしっかりと響くような声で言った。

 

「やるぞ」

 

「「「「「うおおおおおおおお!」」」」」

 

 男も女もその手には使い古した農具と大工道具を手に部屋を一斉に飛び出した。

 

「いいか! まずは武器の奪還だ! 数で攻めれば必ず奪い返せるぞ!」

 

「「「「「「おおおお!」」」」」

 

 村人たちの怒涛は村の大地を揺るがすかのようだった。

 

***

 

「ふふん、もう潮時ですね、はい。この村のチーズは結構気に入っていたのですが、残念ですね。」

 

 葡萄酒の入ったカップをゆっくりと回しながら言った。

 ことの成り行きを静観していた領主だったが、この土地の変わりゆく姿に、村人たちの矛先がこちらへ向かうのは予想していた。

 

「しかし、無駄ですね。」

 

 ニヤリといやらしい表情を浮かべた。

 

「領主様、そろそろ」

「ええ、首尾は整っていますね」

「抜かりなく」

「では、行くとしましょう。あ、そうそう村人はなるべく殺さないようにお願いしますね」

 

 カップに残った、葡萄酒を一気に傾け、カップはスルリとむくんだ手からこぼれ落ちていった。

 

***

 

 たどり着いたその庭には光が消えていた。

 鮮やかさを競い合うかのように咲き誇っていた花々も、日の光にも負けない蛍の輝きも、そして川の水も全てが失われていた。

 川底からはボコッ、ボコッと音を出し、最後の水が湧き出てていたが、ロビンの訪れとともにその音は消え、命の源が死んでいった。

 ハラリとひとひら、ロビンの顔を何かが掠めた。

 

 見上げると、命の力を誇らしげに、青々としていた木々の葉が、時を急ぐかのようにその色を赤茶色へと変え、木々から次々と落ちていく。枯葉はカサリカサリと積み重なり、あっという間に辺りを命の終わりの色へと染めていく。

 

「くそっ! 間に合ってくれ!」

 

 行く手を阻むかのように、枯葉は目の前に降りかかる。それを手で払いのけながら小屋へと向かう。

 

 小屋の中はまるで空き巣が入った後のように、ものが乱雑と転がり落ちていた。アリスが母と暮らした思い出も、アリスと過ごした日々の思い出も無残にも壊されていた。

 

「っ……頼む!」

 

 神にすがる思いでアリスが魔法を作る部屋へと向かう。

 割れた小瓶、踏み荒らされた花々が隠し、埋まるように、それはあった。

 

 イチイの木で作った弓。

 

 ロビンが弓を握りしめ、決意を固めるように言った。

 

「アリス」

 

 突然小窓が開き、部屋の中に一陣の風が吹いた。そしてその風はつむじ風を起こし、ロビンを包む。初めてアリスにおまじないをかけてもらった時のように優しく温かい風だった。

 

コンコンーー 

 

 開いた窓にはフェニスが「急げ」というような目でこちらを見つめている。小屋を飛び出し、枯れ葉の落ちるその森を疾風のごとく駆け抜けて行く。

 

***

 

「ふふん、合流できましたか、はい」

「はい、村人たちの暴動も難なく押さえ込みました。」

「そうですか。ところで、その中にロビンはいましたか?」

「いえ、そのような報告は受けておりません」

 

 怪訝そうに片眉を吊り上げ、顎をさする領主は精鋭の男に指示を出した。

 

「一応、警戒しておきましょう」

「畏まりました」

 

 男は指示通り、全体に指揮を出した。

 

「ふふん、帰ってから調教を始める予定でしたが、なかなか我慢が難しいものですね、はい」

 

 領主の乗る天蓋付きの四輪馬車の中には、領主と手足を鎖で繋がれ、目隠しをされたアリスがいる。馬車の四方は天蓋で囲われており、外からは中が見えないようになっている。

 アリスは衰弱しきった様子で、ピクリとも動かなかった。

 

「ふふん、ふふん、ふふん、たまりませんねぇ」

 

 鼻息を荒げながらベルトを解き、自らのそそり勃つ下半身を露出させ、アリスへと近づいていく。

 

 アリスの口に含ませていた布を取り去ると、布とアリスの口腔に糸が伝う。領主はそのアリスの涎で濡れそぼった布を自らの先へ塗りつける。

 

 「ふふん、ふふん、ふふん、最高です!」

 

 アリスの髪の毛を乱暴に鷲掴むと、「あっ」と声を上げるアリス。そしてその小さな口元へとその欲望を近づける。

 

 その時馬車が大きく横揺れし、領主は馬車の中を転がり、頭を打ちつけた。アリスも馬車の中を転がり、小さな呻き声を上げた。

 領主は急いで衣服を身につけながら、精鋭に尋ねた。

 

「な、何事ですか?」

 

「いえ、強い風が吹いただけです。あと、森の木々が枯れ始めましたが、特に行進に影響はございません。ご安心して、お楽しみください」

「ふふん、そうですか、魔法を失った影響でしょうねえ」

 

 と、一度だけ辺りを見回すと、高い木々に囲まれた森の中を進む。木々からは命を失った葉がひらり、またひらりと落ちていく。 

 ロベルトたちの村は深い森に囲まれており、森をぬけなければ一番近くの港町へも、自分の領地へは行くこともできなかった。領主はこんな森の中で馬車を横揺れさせるほどの風が吹くものなのかと疑問を持ちながらも、馬車の中へ戻った。

 

「ふふん、では続きを」

 

 そうしてアリスへ近づこうとした時だった。

 

「……ン」

「どうしましたか? 今からたくさん可愛がってあげます」

「ロ、ビン……たすけ、て」

「ふふん、彼が来ても、この精鋭たちにはかないませんよ」

 

 アリスは振り絞るように、今までに出したことのない大声で叫んだ。

 

「ロビーーン! たすけテェェェ!」

 

 大声を出したアリスがに対し苛立ちを感じ、「チッ」と舌打ちをした後、アリスの腹を蹴り上げた。アリスは声にならない呻き声を上げた後、痛みを堪えるように身を強張らせた。その後も、領主はアリスを蹴り、踏みつけ続けた。

 

「ふふん、いいですかぁっ? あなたはっ!」

「ひぐっ!」 

「私のモノなんですよっ!

「あっ!」

「今更他の男にっ!」

「がっ!」

「媚を売るなど許されませんっ!」

「うっ!」

「ゴホッ! おヴッ! けはっ!」

 

 アリスの小さな口から咳とともに血が飛び散り、床を赤く染めた。必死に肺に酸素を取り入れようとしても、うまく呼吸ができていないようだった。領主は再び髪を鷲掴みし、無理やり顔を向けさせる。

 

「ふふん、まだ壊れてしまってはこまりますねぇ、はい。まだ全然楽しめていないのですから」

 

 乱暴にその頭を馬車の床へと投げつけると、アリスの頭は鈍い音とともに打ち付けられた。

 

「ふふん、興ざめてしまいました。今日のところはこのくらいにしておきましょう」

 

 アリスの瞼はゆっくりと落ちていった。

 

***

 

 村に到着した時にには、無残にも地面に横たわる大人たちがいた。数名の女性たちが、手当に当たっている。

 

「村長! 一体……」

「ロビンさん!」

 

 壁に寄りかかりカレンの治療を受けているロベルトの肩を強く揺すると、腫れたまぶたからわずかにアリスと同じ赤い瞳が見えた。

 

「ロビン……くん、娘を、アリスを取り戻してくれ」

 

 振り絞られるように出された声とともに口から血が伝っていた。傷口は布を巻かれているが、右肩から左胸の下あたりまで血がにじんでいた。幸いにも傷は浅く致命傷には至らない。

 

「アリスに……謝りたいんだ」

「ええ、しっかりと謝ってもらわないといけませんね」

「ははっ、そうだな。……っ」

「もう喋らないほうがいいです、必ず連れて帰りますから」

 

 そう言うとロベルトは返事をする代わりに、手を軽く上げて答えた。ロビンもそれに応えるように頷き、立ち上がった。

 

「ロビンさん! ……わたしのせいでこんなことに。わたしがロビンさんのことあの領主の人に言わなければ」

「カレン、今は後悔している時じゃない。過去は変えられない、前に進むしかない。そう教えてくれたのは君だ」

「ロビンさん」

「前に進むんだ。もうこれ以上過去にとらわれないように。今できることをやるんだ」

「今できることを……」

「ああ、だから俺はアリスを助ける!」

 

 背を向けて駆け出そうとするロビンにカレンは言った。

 

「ロビンさん! 必ず、戻ってきてくださいね!」

 

 ロビンは振り向き頷くと村の外へと駆け出した。

 

***

 

 領主一行に追いついき、森の木々に隠れながら尾行をしていたが、攻めあぐねていた。領主の隊列は人や馬が踏み固めた道を進んでいた。道の隣には剪定された木や雑草が生い茂っている。あまり手入れはされていない道だった。

 

 戦力差、1対15。今持っている矢は全部で7本、精鋭部隊全員を仕留めるには足りない。村の押収されていた武器も無残にも壊されており、どれも使い物にならなかった。かろうじて残っていた7本の矢と、小さなのナイフでは頼りがなかった。それでも確実に数を減らさなければならなかった。単純に考えても一本の矢で2人以上射止めなければならない。

 

 隊の1番後ろを追従するのは馬上の騎兵2人。その前方を皮鎧をきた歩兵2人組とは5メートルほどの距離を取り先行している。その前方を行くのは荷馬車だろう。手綱を引く従者が一人。

 そして騎兵の2人の前には一際大きな天蓋付きの馬車がある。間違いなく、アリスはあの中だ。両隣には鉄の鎧をを装備した騎兵2人。一人は側近の男だろう。残りの6人はおそらく、天蓋付きの馬車の前を先行しているはずだ。

 

 最後尾の2人を同時に仕留めたとしてもその距離からは落馬した音で振り向き敵襲があったことを感ずかれる可能性がある。

 

 とても矢を射ることができるような状況ではなかった。森を抜けられると奇襲の手段がほとんどなくなってしまう。何としても森を抜ける前に助け出さなければならなかった。

 

 するとかさりかさりと、枯れ葉が降り始めた。その音と量は段々と増し、ところどころ視界を遮るように枯葉が落ちていく。

 

 隊を枯れ葉が覆う。この機を逃す手はないが、賭けでもあった。矢を2本かけ狙いを定めた。枯れ葉の間をすり抜けて最後尾二人の首の付け根を射る。矢が弓から離れたと同時に駆け出し、一人の男の首の付け根からその矢を引き抜く。もう片方の矢は倒れた拍子に折れてしまった。

 

 残り6本と13人。

 

 落馬の音に気付いた一人が後ろを振り向くも、枯れ葉の雨に視界が妨げられるが、その落馬した仲間の姿を見た。

 

「てっ……」

 

 敵襲があったことを告げるために開けた口には、木の影から放たれた矢が塞ぐ。矢は喉を貫き、隣の振り向いた男の目を貫通していき、その矢は彼方へと飛んでいく。

 

 残り5本と11人。

 

 荷馬車の従者は悠々としている。降り注ぐ落ち葉に魅入っていた。ガラガラと音を立てる荷馬車にのっても、従者は気づくことはないだろう。前を進む騎兵との距離はそう近くもない。

 改めて騎兵の装備を確認する。簡単な鎖帷子をの上に革鎧をまとっている簡素なものだった。一人は矢筒を肩から下げており、十分な量が入っている。あれを手に入れられれば、戦いを有利に進められる。

 

 2人並んだと同時に矢をいれば問題ないが、鎖帷子が矢の軌道をそらすに違いない。やはり後ろから奇襲でやるしかない。

 従者に罪はないが死んでもらう必要があった。従者の口を押さえ、ナイフで喉を掻き切る。ゆっくりとその屍を横たえる。荷馬車を飛び降り、地面を蹴って飛び上がる。

 

 従者を失った馬車は動きを止めると車輪の音が止まり、異変に気が付いた騎兵二人が振り向いた。

 

 右手にナイフ、左手には矢を顔の前で十字に構え、それを思い切り喉元に向かって振り抜いた。声を上げるその前に確実に仕留める。そして手に入れた矢筒の中の矢は十分な量だった。

 

 しかし矢を取ったとき、矢は一本、また一本と増え続けていく。次第に両手に持ちきれないほどの矢が地面にバラバラと音を立てて落ちていく。

 

「ふふん、それだけあれば十分でしょう、はい」

 

 その声を聞いた瞬間、天蓋付きの馬車から領主が顔を覗かせ、隣を追従していた部下達が鋼の剣を抜剣し、こちらにその切っ先を向けていた。

 

「ふふん、大事な部下をよくもまあこんなに殺してくれましたねぇ、はい」

 

 一瞬にして矢筒から矢を抜き、弦にかけ、指から離れようとしそのときだった。

 

「おっとぉ、この魔女がどうなってもよろしいのかな?」

「アリス……」

 

 領主はアリスの喉元に小さなナイフを突きつけ、牽制する。

 アリスの口元からは血が伝っていた。

 

「さあ、弓矢を下ろしていただけますかな、もちろん矢筒もお願いしますねぇ」

「くそっ」

 

 弦にかけていた矢を地面へと放り投げ、矢筒を外す。が、どうしても弓手放すことができなかった。

 

「さあ、弓も手放していただきましょうか!」

 

 飛沫を飛ばし、アリスの喉元に突きつけられたナイフはさらに強く握られ、白い喉元からは血が滲み出す。

 

 しかし手から弓を放せなかった。

 

 弓を中心に風が吹き。弓をつかんでいる手を動かすと、弓を追いかけるように風がまとわりついてきた。

 

 まるで使えと言うように。

 

「弓をおろせというのです! 早く!」

 

 領主の言葉は耳に届かない。風が音を遮っている。 

 

 弓を構えその弦を引く。小さなつむじ風が弓のしなりに合わせ、一点を中心に風が回転、集束しはじめる。

 

 その異様な光景にたじろぐ領主は魔女から奪った幻惑の魔法を使おうとするが、ロビンの目を見た領主は蛇に睨まれたカエルのように動くことができない。

 

「か、ぜさん、かぜさん……。ロビンの、おてつだ……い、おねが……い」

 

 アリスの唱えるおまじないが途切れ途切れに聞こえる。力なくうなだれてしまったがその壊れかけた鈴の音に込められた力により、さらに大きな渦となっていく

 

「な、ななななんですかその魔法は! そんな物騒な物こちらにむけるんじゃ……あ」

 

 緊張を解く。最大限に圧縮された風が、小石や小枝を巻き込み、領主そしてその部下達の体を切り裂いていく。やがて、突風が吹き荒れると領主達は空の彼方へと飛んで行ってしまった。

 

 初めて使う魔法の威力にしばらく圧倒されていたが、支えを失ったアリスが荷馬車から落ちようとしているのをかろうじて受け止める。

 

「アリス! おい! しっかりしろ!」

 

「ロビン……」

 

 俺の名を力なく呼び、小さな手をゆっくりと上げる。その手を優しく握りしめる。

 

「ああ、ここにいるぞ。もう大丈夫だ」

 

 呼吸が弱い、今に消え入りそうなその魂をなんとか助ける方法ないかと模索した。

 

「おかあさん……おまじない」

 

 こんな時にも母との約束を守ろうとする健気さに胸が締め付けられる。アリスのおまじないの入った小瓶を、領主の乗っていた馬車から引っ張り出した。これを使えば、弱ったアリスを救う手がかりになるかも知れない。

 

「アリス! このおまじないは使えないのか?」

「ロビン……お家にかえろ?」

「そ、そうか! 家に帰れば使えるんだな!」

 

 アリスは微笑むと静かに目を閉じた。

 

「アリス! 待ってろ!」

 

 アリスを抱え、荷馬車の馬に跨り魔女の森のその奥の光に庭へと急いだ。

 

 森は朽ち、積もった枯葉が刻一刻と終わりを告げている。

 

 それでも森を駆ける。

 

 光を失った庭に再び命を灯すため。

 

小説を書くペース

もっと早く書くにはどうしたらいいか?

ということについて考えたが、この前怒涛のように一時間に3千文字近くかけた話をしようと思う。

 

完璧なる自己イメージと無我の境地。これこそまさにハイペースで文字を書くことができる。

 

これぐらい書いて当たり前という自己イメージを明確にイメージすることで、一時間三千文字を達成したのだ。

 

俺ってすごい!(ハイエフィカシー!)

 

そういうマインドを育てそれを当たり前にした時、初めて自分に正しい不満を持つことができる。

 

つまりコンフォートゾーン。

 

自分の意識はあるんだけど、それを無視して無意識がキーボードを打ちまくってるような感覚。あれはライターズハイだというんだろうな。

 

推敲しても修正したところは誤字脱字とちょっとおかしな表現のみ。いや〜コーチングってすごいと思った。普段から自己イメージを高めていくことはとても大事だと実感したからここに書いておく。

 

魔女狩り 1

村の中央、村長の家の近くの広場に村人たちが一堂に集まっていた。以前どこかで見たような光景が脳裏をよぎり、昔の知人の安否が少しばかり気になった。その中央に立つのは小太りの男と、全身を鎧で覆った苦境な男。以前と変わらない欲にまみれた姿と笑みを浮かべている。

 

「ふふん、この村ですか、はい」

「はい、そのようです」

「ふふん、それではこの村の近くの森のどこかに『魔女』がいる、ということですね、はい」

「はい、ただその森には誰も立ち入らないようでして」

「ふふん、構いません、村人をけしかけ探索したのち、犠牲になっていただきましょう」

 

二人がひそひそと何かを話している内容は聞くことはできないが、良からぬことを考えているのだろと推測が立つ。

 

「おや、あなたは……」

「領主様……」

 

面識があるのに何も挨拶をしないのは礼儀としては失礼だと感じ、みずから前に出た。しかし、あの時の光景が脳裏にチラつき始め、頭がズキリと痛み顔をしかめた。

 

「……おお、英雄ロビンですね! まさかご存命だったとは! 再びお会いできて嬉しいですよ」

「はい、あの時は大変お世話になりました」

「いえいえ、こちらこそあなたのおかげで多くの利益を生むことができましたよ。こちらこそ感謝を申し上げたい」

 

(ふふん、少々面倒ですね……)

 

一瞬だが領主の眉がピクリと動いたように見える。

 

「領主様、もしかしてこの村は領主様の……」

「いえいえ、この領地は私の古くからの友人の領地ですので」

「それでは……」

 

ロビンの言葉を遮るように領主は言った。

 

「友人から面倒ごとを頼まれましてね……、この近くの森に『魔女』がいるそうですねえ、はい」

 

村人たちは一斉にざわつく。

ロビンは動揺を抑え込む。もし今慌てふためけばアリスのことを知られかねない。

 

「その『魔女』を……狩ってほしいといわれましてね。私としては是非その古い友人に協力をしたくて参りました」

 

淡々と今回来た理由を告げた。

 

(ふふん、正確には元、友人ですがね)

 

「どこかの誰だか知らねえが、やめておいたほうがいい! 危険すぎるぞい!」

「ああ、ずっと言いつけを守ってきたんだ。もし、それが失敗して魔女の怒りにでも触れればどうなるかわからないんだぞ!」

「そうだよ、魔女はすごく恐ろしいんだよ。やめておいたほうが……」

 

これから行われようとする『魔女狩り』に対して賛成する者は誰一人としていなかった。

 

「領主様、この村の村長のロベルトです。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」

 

深くお辞儀するロベルトはどこか焦りの色を隠しきれていなかった。その後ろにはカレンが付き従っていた。

 

「我々は魔女の出現以降、魔女の森へは入ってはならない、かかわってはいけないと決まりを守ってきました。そのためか魔女からの脅迫や、呪いなどの類は一切受けておりません。変に刺激されますと、先の者が言ったように怒りに触れる可能性があります」

 

村長の言う言葉に村のみんなが「そうだ、そうだ」といい、反対の姿勢を示していた。

 

「これを……ご覧ください」

 

そう言って領主が取り出したのは、どこかで見覚えのあるその小瓶は、小さな光の粒がふわふわと瓶の中を漂い、一瞬で皆の視線を集めた。

 

「こ、これは……一体」

「なんだ?」

「ふふん、これは以前私が捕らえ、火あぶりにした魔女が所有していたものです。この瓶を開けたとたん魔法の溢れんばかりの力が手に入るのです」

 

村の皆に自慢するかのように、その小瓶を持つ腕を高々と掲げた。その小瓶の放つ光が数倍も光り輝くように見えた。

 

「いざという時はこれを使うと良いのです。私は一度この小瓶を試しに使ったのですが、それはもう、強い力を得られたのです。」

 

「ロビンくん」

 

領主が高々と魔法を自慢し、村人たちの視線を集める中、村長が突然こっそりとロビンに話しかけてきた。

 

「君は魔女の森へ行ったことがあるのだろう?」

 

ロビンは突然の問いかけに動揺が隠せなかった。村の最大のタブーを犯してしまったのを気づかれたのだろうか? いや、まだ憶測の域を超えていないその質問に正直に答えるのはばかばかしいとロビンは平静を保つ。

 

「一体なんのことですか?」

 

動揺を誤魔化すかのように、あくまで平静を装ってたずねた。

 

「私は、魔女を知っている。そして……」

「英雄ロビン」

 

今とても重要なことを話していたように思えたのだが、それを遮る領主の言葉に苛立ちを覚えた。しかし、今確かに『魔女を知っている』と聞いた。

 

「なんでしょう?」

 

ロビンはほんの少し棘が立つような言い方をした。

 

「ふふん、あなたの過去の戦績を信頼し、ぜひとも魔女討伐に参加していただきたい。そしてあの森を魔女から取り戻そうではありませんか。いざという時はこの魔法でおてつだいさせていただきます、はい」

 

村人たちはざわついていた。魔女を討伐するなど前代未聞であり、その提案に村人たちの心は瓶の魔法を見てからは心が動いているようだ。

 

ロビンは魔女の、アリスの本当の姿を知っている。人畜無害な存在をなぜ殺す必要があるのだろうか。魔法が使えること以外を除けばただの女の子だ。だが今アリスをかばうような言葉を発することはあまり得策ではない。それに村長の先ほどの言葉も気にかかっている。村人たちは今も領主が続けて言う言葉を信じ始めている。今そのようなことを言えば、逆に反感を買うことになりかねない。

 

「つまり、魔女にも剣や矢が通じるということですか?」

「ふふん、何度も言っているように魔女は恐るるに足りません」

 

(魔女を殺すのにどれだけ多くの犠牲を払ったかは秘密ですがね……)

 

「ロビンくんが英雄?」

「どういうことですか?」

「ふふん、少しお話しすれば長くなりますが、私の元領民でして、『領地を守る』戦いの際は大活躍されたのです、はい」

「領主様、その話しはあまり……」

「おお、大変失礼いたしました。人の過去を勝手に話すのはよくありませんでしたね」

 

悪気もなく話しを続けた。

 

「しかし、今話さず、いつ話すのでしょうか? あなたの過去の戦いを知ればこの村人たちを勇気付けるはずです。それにみなさんは既にご存知なのではないですか? 彼の弓矢の人並み外れた能力を」

「しかし……」

 

このままでは領主の思う壺になる。本当に『魔女狩り』へとかりだされてしまう。

 

「そうだ! ロビンくんがいるじゃないか!」

「ああ! どんな獲物も百発百中! その体からは信じれれないほどの怪力!」

「ロビンくんがいれば百人力だ!」

「ふふん、そうです皆さん、彼の力とみなさんの協力があれば、魔女などあっという間に殺すことは可能なのです、はい」

 

(もちろん、英雄や村の方がたには犠牲になってもらいます、はい)

 

「魔女からあなた方の森を奪い返すのです!」

 

話がうまい。

次第に村人たちの心は一気に『魔女狩り』へと向かっていく。もう手遅れなのかもしれない。ならば、出来ることは一つ。そう思い、ゆっくりとその場を離れようとすると、ロベルトがロビンの腕を掴んだ。

 

「ちょっと来てくれ」

「しかし……」

「頼む」

 

懇願するその目は真剣そのものだった。コクリと首を動かしロベルトの後に続いた。

 

「おとうさんと……ロビンさん?」

 

***

 

ロベルトの書斎へと案内された。ここへ入るのは初めてロベルトとあった時以来だ。

 

「一体どうしたんですか?」

 

ロベルトは真剣な面持ちで俺に訪ねてきた。

 

「君は……魔女にあったんだな?」

「っ……」

 

先ほどと同じ質問だった。

 

「沈黙は肯定なり……、そうか」

「……はい、申し訳ありません」

「そうか……、魔女は……アリスは、生きていたんだな」

 

なぜ名前を知っているだろうか、ロビンは驚いた表情を隠せないままロベルトに視線を向けていた。

 

「アリスは……私の、実の娘だ……」

「……は?」

 

何を言っているのだろうか、驚きや疑いがぐるぐると頭の中を駆け巡るが、合致点をみつけたのだ。彼の目は赤い色をしている、そしてアリスも赤い色の瞳を持っていた。

 

「ま、まさか……」

「そのまさかさ……。私の妻は『魔女』だった。そしてその妻との子がアリスだ」

 

嘘偽りなどないと語るように、アリスと同じ赤い目がロビンの瞳を真っ直ぐと見据えている。その瞳が語る出来事が真実であると理解するにつれ、怒りがこみ上げロベルトの胸ぐらを掴みその体を壁へと追いやった。壁へと打ち付ける大きな音が響くと同時に、ロベルトは小さな呻き声をあげた。

 

「あなたが、あなたが、あの子の父親だと? ふざけるな! どうして、どうして! 今まであんなになるまで放っておいたんだ! あんな、あんな……っ!」

 

思い出すのは出会った頃のアリスだ。辛うじて肉がついている、今にも朽ちてしまうような貧相な体をしていた。目から生気は全く感じられず、消えかけた命だった。

 

今知った事実はとても正気の沙汰とは思えず、アリスの母が、そしてアリスが大事な人だと言っていた者は、実の夫であり父親だったのだ。しかし、この男はアリスを、実の娘を見殺しにしようとしていた。アリスはそのことも知らず、実の父とも知らず、ただただ、母との約束を健気に守ってきた。この村のため、そしてこの男のために!

 

「ぐっ、私が会いに行こうとしなかったでも思っているのか? 何度も森へ行ったんだ! 行こうにも、妻のつかった魔法が、彼女たちが住む場所へたどり着くことを許さなかったのだ!」

「嘘だ! 俺はすぐに行くことができた! そんな言い訳は聞きたくない!」

 

ギリギリと首を絞め上げ、次第にロベルトの体が浮いていく。

 

「あなたは……アリスを見殺しにしようとした!

「ち、違う、話を きいて、くれ」

 

瞬間、悪夢の光景が脳裏をよぎり死への恐怖が襲い、ロビンは掴んでいた手を不意に放してしまった。ロベルトは床へと手をついて、肺に一気に入ってきた空気を大きく咳き込み吐き出した。

 

「くっ……」

 

悪夢の光景が走るたび痛みが走る頭を抱え、その激痛と恐怖を抑え込もうとする。最近まで見ることがなかったその悪夢が一気に押し寄せ、心を恐怖で支配する。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ロビンくん、君は赤い鳥に導かれたのだろう?」

「カレンから聞いた時にピンときたのだ。君が魔女に、アリスに会ったのではないかと」

「だからなんだというんです!」

「私にはその赤い鳥が唯一、彼女たちとの通信手段だった。アリスが生まれたこともあの赤い鳥が知らせてくれた。妻が死んだことも……。その日を境に赤い鳥は来ることはなかったんだ。それからはまだ見ぬ娘のことが唯一の気がかりだった。死に物狂いで探したんだ! 何度も、何度も。それでも……見つけることができなかった……」

 

まるで、ロビンが村へ戻る時、寂しさを溢れさせるアリスの赤い目がロベルトの目にはあった。疑う余地はなかった。その目は幾度となく見ていたのだから。

 

「頼む。ロビンくん! 娘を! アリスを! 助けてやってくれ!」

 

床に頭をこすりつけ懇願するロベルトに、膝をついてそばに寄り添い、そっと手を添えた。

 

「……っ、元からそのつもりです。もう誰も……不幸なんかにしない!」 

 

***

 

 ロビンとロベルトは窓から広場の中央を見つめながらこれからどうするかを思案していた

 

「さて、領主の連れてきた人数はかなりの数です。おそらく前に捕らえた魔女はかなりの力を持っていたのでしょう。多くの犠牲を払ったはずです。今回もそれを見据えて、人数を集めたに違いありません」

 

「私もそう思っていたよ。村人たちを犠牲にしようと言葉巧みに先導しようとしていたな。魔女の件は村の誰にも話していない。もちろんカレンにもだ」

 

腕を組み顎に手を当てて、思案したのちロベルトは言った。

 

「どうする? あの領主が連れてきた手練を倒すにも大義名分が必要だろう。でなければ村人とたちは納得するまい。君は魔女討伐に選ばれてしまったようだが……」

 

ロベルトの顔はだんだん不安と焦りが募っているように見えた。

 

「私に考えがあります」

 

ロビンはロベルトの不安を抜いさるような言葉をかけ、自らの考えを伝えた。

 

***

 

村の中央広場では村人たちと領主の連れた兵たちが魔女の森へ行く準備をしていた。その中央では領主が、着々と指示をだしていた。

 

「おお、ロビン! どこへ行っていたのですか? これから森を捜索する人員を配置しようとしていたのです」

「申し訳ありません。少し準備をしておりました。それで領主様」

「どうしたのです? 深刻な顔をされていますが」

「恐らく、隊を編成し大人数で捜索するのは魔女に感ずかれる恐れがあります。それに魔女の森は未だ誰も足を踏みれいていない未開の土地。騒ぎ立てれば、魔女の怒りに触れるやもしれません」

「確かに、一理ありますね」

「さらには魔女の森、いかなる罠や術が仕掛けられているか検討も及びません。大人数、そして短期決戦となりますと、かなりの犠牲が予想されます」

 

村人たちは顔を見合わせながら、不安な表情を浮かべ始めた。それを見計らって領主に告げた。

 

「ならば、少数精鋭。私一人、先遣隊として行かせてはいただけないでしょうか?」

 

その言葉を聞いた者全員がギョッとした目をして驚いていた。

 

「ふふん、私としても村の皆様を、そして私の部下を犠牲にしたくはありません、はい。……いいでしょうお願い致します」

「それでは、早速向かいたいと思います」

「ええ、よろしく頼みましたよ」

 

***

 

弓矢と、荷物の一番そこで眠っていた湾刀を二本を背中に携え、魔女の森をひたすら走った。森への道はアリスのおまじないが導いてくれる。ただひたすら、アリスの元へと走った。

 

***

 

「あ! ロビン!」

 

アリスは木で編んだカゴの中に、綺麗な花と植物をたくさん入れて小屋の中へ向かう途中だった。足音に気付いたのかこちらを振り向き、小走りで駆け寄ってきた。

 

「おかえ、り? どしたの?」

 

呼吸が乱れている様子を見たからか、不思議そうに首を右へとかしげてたずねた。その目には一切の疑いはなく、少しだけ心配そうな様子を携えていた。

 

「アリス、静かに聞いてくれるかい?」

「ロビン、少し怖いよ」

「ごめんね、だけど大切な話なんだ」

「う、うん」

 

ロビンの真剣な表情はアリスにも伝わったようだ。

 

「今君は悪い人に悪いことをされようとしている、今村にその悪い人がいて、たくさんの人を集めて君にひどいことをしよとしているんだ」

「えぇ!! アリス、悪いことした?」

 

その目には一気に恐怖心をまとい、驚きを隠すことができない様子だ。すぐそばまで駆け寄って飛び込んでくる彼女を膝をつき、優しく抱きとめ安心させるように頭を優しく撫でた。

 

「いいや、アリスはいい子だよ、アリスは魔女……だよね? その人はアリスのおまじないを狙っているんだ」

「ど、どうしてそのこと、その人知ってるの?」

「アリス、君以外にも魔女はいたらしくて、その人はその魔女からおまじないを奪ったんだ。」

「へ? おかあさんや私の違う魔女がいるの?」

「ああ、そうみたいだ……俺も知らなかったよ」

「そ、それで、アリスのことも……アリスのおまじないも?」

「ああ、アリスのためにも、お母さんとのおまじないを守るためにも一緒に逃げるんだ、アリス!」

「う…………っ」

 

頷き、決断しようとする彼女に一瞬の戸惑いののちアリスは答えた。

 

「……アリス、おかあさんとの約束守りたい……」

「わかっているよ、アリス! さあ!」

「……おまじない、取ってこなきゃ!」

「手伝うよ」

 

 小屋へと急ぎ魔法を作る部屋へと入ると、大事そうに小瓶を布で包みアリスの持っている小さな肩下げカバンの中にいれた。もう一つの肩下げカバンにはアリスに負担にならないような量でパンと木の実を詰め込んだ。

 

「ロビン、準備できた」

「こっちもだ。さあ、行こう!」

 

アリスは光の庭から出るときに、名残惜しそうに小屋を見つめた。

 

「おかあさん……」

 

***

 

 アリスはしっかりと食事を取ってきていなかったせいか、体力が同じ年代の子たちよりも劣っている。少し走っただけでも息切れをしてしまう。おまけに自分の命が狙われている危機感と恐怖心からくるストレスで精神も消耗しているようだった。

 

そんな様子を見かねて、アリスを両腕で抱え走り出した。

 

「わっ! ろ、ロビン!」

「行くぞ!」

 

行く当てはなかった。ただ今は、村とは反対の方向へとひたすら走る。この森を抜け、そのさらに向こう側へ行けばなんとかなる。

 

ーーそうなるはずだった。

 

「あれ? なんで……」

 

急ぐ足はゆっくりと立ち止まり、その目の前にある見慣れた小屋に戸惑いを隠せなかった。

 

「ロビン? 忘れ物?」

「いや、そんなはずは……途中で道を間違えたか?」

 

なんとアリスの小屋の前に立っていた。

なぜ? と頭が次第に混乱していくのがわかる。しかし、悩んでいる暇はなかった。とにかくここを離れる必要があった。また村とは反対へと足を向け、振り向いたとき、そこには同じ小屋があったのだ。

 

「ど、どうして……」

 

また、後ろを振り向いても同じ光景が広がっていた。不安と恐怖が入り混じったものが額から流れているのがわかる。

 

「ふふん、やはりそうでしたか……はい」

 

聞くのも嫌になるようなその声に、背筋がぞくりと凍りつくようだった。異様な空気が周囲に漂っているのがわかる。

アリスの心地よい「おまじない」とはちがう、邪悪な「魔」の力を。そして、その後ろには恐怖と軽蔑の視線が無数にあった。

 

「な、なんで……」

 

アリスをその視線から守るかのように抱きかかえる。腕の中のあアリスはすでにその威容を察したのか、小刻み震えているがわかる。

 

「あの小さな女の子が?」

「いや、見た目に騙されてはいけん! あの様な姿に化けているのかもしれんぞ!」

「そうしたらロビンくんも……」

 

様々な憶測が飛び交う中、一際聞きなれた声で俺の名前を呼ぶ声がした。

 

「ロビンさん!」

 

カレンは俺と、アリスの前に立って領主、そしてその部下と、村人たちに言った。

 

「ロビンさんは、ずっと様子がおかしかったの! あんなに働き者だったのに急に仕事をほっぽり出して、ふらっとどこかへ行ったのを覚えてるでしょ?」

「確かにそうだ」

「まあ、そんな日もあった様な……」

 

村人たちはカレンの言葉にかすかな覚えがあった。

 

「きっと魔女に操られているのよ! だから今も、魔女を庇う様に操っているんだわ! そうですよね? ロビンさん!」

 

その目はそう答えてほしいという訴えかける様な目立った。目尻いっぱいに涙をためて、俺の言葉を待っていた。

 

ーーロビンは決断を迫られていた

 

(俺は……)

 

「ロビン……」

 

小さくつぶやき、か弱い小さな手でぎゅっと握りしめられた時、ロビンの心は大きな決断をくだした。

 

(俺は……アリスを守る……!)

 

彼女が命を奪われるいわれはない。ただ、母との約束を健気に守ってきたこの幼気な彼女には全く罪はないのだ。ただ一人の欲望のために、その命を失わせるわけにはいけない。

 

寸分違わぬ動作で弓を構え、弦に三本の矢をかけた。そしてそれを領主へと狙いを定め、射抜こうとした瞬間だった。

 

(狙いが……定まらない?)

 

目に映っているのは領主が二人、いや三人……その数はだんだんと増えていき、その一つ一つに狙いを定めるが……。

 

(どれが……本物なんだ!?)

 

焦りは募り背中にはじっとりとした汗が流れている。

 

「ふふん、わからないでしょう、はい。幻影で惑わし、相手をじわじわと追い詰める、なんともいやらしい異能の力です。」

 

呼吸が乱れ、生唾を飲み、顎には一筋の汗が流れた。瞬間、死に追いやられたあの悪夢の戦慄が頭の中を駆け巡り、構えていた弓矢はいつの間にか手から離れ、地面に転がり落ちていた。

 

頭を抱え悶え苦しむのを心配し、アリスが俺の名前を呼ぶようだが、次第にその声はだんだんと遠くなっていった。