Chanmanの日記

作家と読書とセルフコーチングのブログ。 私の作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しております。

アリスとの日常 3

イチイの木

 

いつかは自分用に新しく弓を作る必要があるとロビンは思っていた。弓には最高の材料を、と探していたが、案外どこにでもある木がそうなのだ。しかし、どの木を見ても納得の行くまっすぐに伸びた木を見つけるのはなかなか困難だったが、アリスはいとも簡単に見つけてしまった。

 

「これがいいの?」

「あ、ああ。これはいい木だな」

 

頬ずりしてしまいそうになる程、まっすぐ綺麗に伸びたイチイの木があった。

 

「アリス、わかんない」

 

木を撫で続ける姿を見てため息混じりにアリスは言った。

 

「いいか、アリス。弓を作るための木はとても大事なんだぞ! こうやってまっすぐに伸びてる木じゃないと後々、変形してしまうおそれがあってだな、その度に火で炙ってひねりをくわえてやる必要があるんだぞ。またそれが結構時間がかかって骨が折れる作業なんだ。だけども、それもまたなかなか面白くてだな、時間を忘れていつの間にか夕暮れって時もあったな。それに……あれ」

 

アリスは自分の竹弓で遊んでいた。

 

「よ、よしこの木を切るぞ!」

 

木を取り直してアリスの見つけてくれた木と向き合う。

改めて見ると少し若い気もするが、弓作りには申し分ない。

木を切り、樹皮を剥がし、半分に切る。

弓の形は、そうだな。機能性を重視して、変な装色入れない、単純な形にすると決める。

削り出して形を整え、表面をなめらかにする。

綺麗にやすりがけを行えば、綺麗な弓の完成だ!

 

「ロビンできた?」

 

ワクワクした様子で完成した弓を見つめている。

 

「わあ、かっこいい!」

「ふふん、そうだろ?」

 

そう言って自慢げに高々と掲げる。

矢を弦にかけ、的あて用の板めがけて放つと、矢はすいこまれるように、的の中心へと到達し、的の後ろまで貫いていた。

 

「わ! 真ん中だ!」

「ああ、かなりいいぞ!」

「アリスもやる!」

「はは、アリスには無理かな~」

「できるもん!」

 

そう言って、ロビンから弓矢を受けとり矢を引くが、どれだけひいいてもアリスが引く弓はしなることはなかった。

 

「むぅ、硬い。ロビンみたい!」

「へ?」

「知らないの? 毎朝、ロビンの……」

「ま、待つんだ! それ以上は何も言わなくていい」

 

アリスから弓を受けとり、再び弓を引くが、強い風が吹いてきた。この風はしばらく止みそうにない。

風の吹く方を見つめていると、アリスは不思議そうに尋ねてきた。

 

「どうしてやめちゃったの?」

「風が強くてね、ちゃんとまっすぐ飛びそうにないな」

 

風を読み、標的をいることはできなくもない。だがこう風が強いと弓の性能を見るには不都合な状況だ。

 

「ふ~ん」

 

アリスは何か考えるようなそぶりを見せ、空を見上げた。しかし風が本格的に強くなってきた。小屋へ戻った方が良いだろうとロビンはありすへ言った。。

 

「アリス、小屋へ戻ろう」

「……うん」

 

***

 

 アリスはロビンとベッドの上で寝ていた。しかしアリスはぼんやりと天井を見つめていた。ロビンにはいつも助けてもらってばかりだ。何かお返ししてあげたいと思っても、ロビンはなんでもできてしまうから、何もしてあげられていなかった。だけど初めてロビンができないことがわかった今、アリスは何かお手伝いできないか考えた。

 

アリスだにできること、それは、おまじない。

 

だけどどうすればいいか考えているがなかなか答えが見出せないまま、夜が深まっていく。

 

隣ではロビンが寝息を立てている。外を見ていると昼間吹いていた風はまだ強く吹いている。

 

何か思いついたのか、目を見開く。ロビンを起こさないようにベッドからゆっくりと下り、小瓶を持って外へと向かった。

 

風上へとその小瓶を向けて、頭の上に両手で構えた。ロビンのために使うおまじない、とても素敵なおまじないにしたいと思いおまじないを唱えた。

 

「かぜさん、かぜさん。ロビンのおてつだい、おねがいします」

 

すると吹いていた風はゆっくりと止み、小瓶のなかへ小さなつむじ風となって集まっている。

コルクの蓋で栓をして小屋へと戻り、机の上にイチイの木で作った弓を置く。

 

そして、小瓶を胸に抱きしめ、蓋をあけると小瓶からでてきたつむじ風はゆっくりとアリスの小さな両手の上で渦巻いている。

 

両手の上のつむじ風をロビンの弓の上に両手を移動させ、おまじないを唱えた。

 

「かぜさん、かぜさん、ロビンのおてつだい、おねがいします」

 

つむじ風は、開かれた両手から降りて、イチイの木の上にふわりと舞い降りた。弓全体を確かめるかのように、弓の周りを一周すると、渦を巻いていた風は弓全体を包み込むかのように解けて消えていった。

 

「かぜさん、ありがとう」

 

お礼を言って、弓をもとあった場所へと静かに置く。

 

そして、ロビンを起こさないように静かにベッドへ潜り込んだ。

 

「ふふ。ロビン、喜んでくれるかな?」

 

ロビンが喜ぶ姿を想像しながら、眠りにつくのだった。