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Chanmanの日記

作家と読書とセルフコーチングのブログ。 私の作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しております。

生き方

ライトノベル 魔女狩り、ダメ、絶対!

アリスがよく食べているこの木の実は、母が採り方、乾燥の仕方、高い栄養を備えていると教えてくれたものだ。このあたりの木は実をよく実らせていたため、食べることに困ることはなかった。

何年も食べ続けていた木の実が、この一週間味気のないものに感じていた。木の実そのものに味は付いているものの、いつぶりかわからない温かい手料理を食べて以来、わからなくなっていた。

 

彼が村へと帰って一週間が過ぎた。彼はすぐ来ると約束したはずなのに、彼と出会ったこの場所で、いつもフェニスと首を長くして待っている。だが、影も形すらも見えなかった。フェニスは時々村の人に見つからないよう、姿をくらませて様子を見に行くが、村の中の様子まではわからなかったようだった。

 

彼を待ち、日暮れのたび自然と涙が溢れていた。母が亡くなったのもこの日暮れ時。真っ赤な真っ赤な赤い空。そんな夕日は一日の終わりと命の終わりを同時に告げる。母が大好きだった赤色は嫌いな色になってしまった。自分の瞳が同じ色をしていることさえも。いつも逃げるようにベッドに潜り込み誰が聞くこともない泣き声をあげた。母を何度も何度も呼べど、その呼びかけに応えてくれるのは誰もいなかった。

 

***

 

過去を打ち明けてから1週間が過ぎたが、悪夢は拭い去ることはできず、カレンは心配し色々と世話を焼いてくれていた。しかし少しだけ肩の荷が下りて、前よりも明るく振舞うことができるようになっていた。

 

「ロビンさ~ん!」

 

ロビンが畑仕事に精を出していると昼食を持ってきたカレンが大きな声で呼ぶ。ちょうど木陰になっている場所に並んで座り、カレンが作った昼食を食べた。

 

「どうしたらいいんでしょう? お医者様にでも聞いてみますか?」

「いや~、あんまりカレン以外に知られてくないんだよね」

「わ、私以外にですか? し、仕方ないですねぇ、私がなんとかするしかなさそうですね」

 

カレンは頬を染め、人差し指を立てていった。

 

「はは、ありがと」

 

以前のように悪夢を見ても旅に出なければという衝動は無くなっていた。ただ少し弱気になることがある。そんな時はカレンが相談に乗ってくれていた。今日はカレンがロビンのためにとっておきの悪夢対策を思いついたと、話し始めた。

 

「あの~、提案、なんですけど、ロビンさんって今一人暮らしじゃないですか?」

「うん、そうだね」

「だ、だから、一人で寝てるわけですよね」

「うん」

「もしかしたら、一人で寝てるから、またあの夢を見てしまうんじゃないかな~と思って」

「なるほど、それは思いつかなかった」

「だ、だからもしかしたら、そ、添い寝役でもいればもしかしたら、見ないかも~なんて思ったりして」

 

(言っちゃった言っちゃった言っちゃった)

 

「添い寝か……ん~」

 

 添い寝という言葉に考え込む。

 

「だ、だから、もしロビンさんが良かったら、わ、わたた、わた……

「ああ! そうだ! そうだった!」

「ふへぇえっ!?」

「ありがとう! カレン!」

 

 カレンの両肩を掴み、礼を伝える。

 

「ふへぇえ!? わ、私でよければその……

 

 カレンの顔を一気になぜか紅潮していた。

 

「今日から準備しないとな!」

「ふへぇえ!? 今日からなんですか!」

「うん! 善は急げってね!」

 

 カレンの顔の紅潮はついに限界を迎えてしまった。

 

ーー

 

「ど、どこもおかしなところはないよね?」

 

カレンは自室の全身鏡で下ろし立ての服を着て、体を左右に振りながら確認していた。

 

「うん、これなら大丈夫だよね。パジャマは新しいのだし。し、下着だって……

 

 納得がいったのか腕を組んでうんうん首を縦にふる。

 

「よし!」

 

 自室の扉をゆっくりと開き、顔だけをだして左右を確認する。

 

(だ、誰もいないよね)

 

ゆっくりと廊下、階段を抜け、無事に玄関を抜け、玄関に鍵をかける。

 

「ふぅ~、緊張した~」

「何が緊張したんだ?」

「ふへぇえ!?」

 

突然の呼びかけに背後を振り向くと、父のロベルトがいた。

 

「お、おとうさん! 驚かさないでよ!」

「はっはっはっ! 悪い悪い! ところで~どうしたんだ~、そんな荷物抱えて、こんな夜に~?」

 

いやらしい笑みを浮かべ、何かを探るように問い詰めるロベルト。

 

「な、なんでもないわよ。ちょっと散歩するだけよ」

「散歩だけにそんな大きな荷物は必要ないんじゃないかな~」

 

何か得心があったのか、ロベルトはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「な、なによ!」

「ほっほ~ん、そうか、そうか! カレンにもついに男ができたか。それで今日はしっぽりとお泊まり会ですかな?」

「ちっ、違うもん! 添い寝だもん! ……はっ!」

「はっはっはっは! 添い寝? 昔はおとうさんに『怖くて眠れない~』って言ってよく添い寝してくれてたけどなぁ」

「昔はでしょ!? 年齢考えてよ!」

「はっはっはっは! まあまあ」

 

今にも噛みつきそうなカレンをあやすロベルト。

 

「ま、とにかく、ロビンくんによろしく伝えておいてくれよ! パパが娘を頼むって!」

「なっ、なななな何いってるのよ~!」

 

笑いながら家の中へと消えていくロベルト。

 

「~~~~っ、お父さんの、バカ!」

 

***

 

「もう何よ! し、ししししっぽりだなんて、おとうさん何考えてるんだか。大体私はロビンさんの悪夢対策のために、そそそそ、添い寝してあげるだけなんだから」

「す、少しも期待なんか……してるけど……

 

ブツブツとつぶやいていると、いつの間にかロビンの家の前についていた。いざ扉を目の間にすると、胸が高鳴っているのがわかる。

扉をノックするが応答がなかったので不思議に思って扉を開いた。

 

「ロ、ロビンさ~ん、私でーす。カレンでーす」

 

部屋の中は真っ暗だった。まだ明かりを消すのは早すぎる時間帯だ。

 

「ロビンさーんいるんでしょ~、出て来てくださ~い」

 

(はっ! まさかこういう演出? いやいやいや、真っ暗じゃないといやだとか?)

 

妄想が暴走しそうなのを抑え、テーブルの上に一輪の花とメモ書きのようなものがあるのを見つけた。

 

(ま、まさか指示書のようなもの? この通りに行えとか、そういったことを!?)

 

期待半分、不安半分、ドキドキしながら丁寧に折り曲げられたそのメモを開いた。

 

「は?」

 

狩りに行ってきます! ちゃんと帰ってくるから安心してください。ロビン

 

……ロビンさんの、バカぁ~~~~~~!」

 

***

 

陽の光がだんだんと赤く染まり始めた頃、まだ解けかけた雪が残る森の中をロビンは歩いていた。初めて訪れた時とは全く景色が変わっており、いくばくかの不安を抱えながら森を進む。

自然と体があの優しい光が包む庭へと進んでいるのがわかる。徐々に近づいているとわかると不思議と心が軽やかになった。もう目前というところで、銀髪の美しい少女の姿が見えた。両膝を抱え俯いているのか綺麗なルビー色をした瞳のアリスの表情は見えなかった。

 

突然、顔を上げたアリスは立ち上がった。辺りをキョロキョロと見渡し、待ち続けていたその姿を探す。

 

「こんにちわ、アリス」

 

光の庭へと歩みよりながらアリスに微笑みかけた。するとアリスは泣きそうな顔をして胸へと飛び込んできた。アリスはロビンの胸に抱きついたまま顔を上げようとしなかった。時々鼻をすする音をさせながら肩を震わせていた。

 

「ロビン、遅い」

「うん、ごめん。ちょっと色々準備してたんだ」

 

カレンの仕事を突然断り、またこっそりと抜け出すのはとてもできなかった。そして自分の過去を話してからカレンはより一層自分のことを気にかけ、世話をしてくれていため時間を見つけることがなかなか困難であった。 

 

しかし、出会ってまだ二回目だというのに、こんなにも懐かれているのは悪い気はしなかった。ただ一つ気になるのは、その痩せたその体だった。前出会った頃のよりも細く感じる。幼い頃に親を亡くした少女を支えていた木の実は栄養があると言えるだろうが、育ち盛りであろうアリスには不十分だと感じた。

 

「もう来ないかと思った」

 

涙声でそういうアリスは背中に回した腕を離そうとしない。

 

「すぐに来るって言った」

「ごめんな」

 

服の裾をより一層強く掴み、なかな離そうとはせず、寂しさをその小さな体いっぱい使って表していた。慰めるようにそっとアリスの頭を撫でるともっと撫でて欲しいと言わんばかりに猫のように頭を擦り付けてきた。

 

「お腹減ったろ? いっぱい食べ物持ってきたよ」

「ほんと!?」

 

アリスは顔を上げ一瞬目をキラリと輝かせると同時に再び恥ずかしそうに顔をそらす。その目は涙で腫れており、とても今泣いて腫れ上がったようなものではなかった。ずっと泣いていたのだろうか、もっと早くにきてあげるべきだったと、ロビンは自らの無神経さに苛立ちを覚えた。しかし、それを表情にださず、そっと彼女の涙を指で拭い、再び頭を優しく撫でた。不思議そうに上目使いで見つめ返す彼女に言った。

 

「ご飯にしよう、腹減ったろ?」

「うん」

 

小さく返事を返してくれたアリスと小屋へと向かう途中、となりを歩くアリスを見ると胸が締め付けられる。その横顔にはすこし肉が付いているが、もしそれがなくなってしまえば骨と皮だけの姿へと変わってしまう。泣きはらした目はより一層、やせ細ったアリスをよりみすぼらしく変えてしまっていた。何がアリスをここまで追いやったのか。以前会った時には、村へ行くのを頑なに拒み続ける理由として考えられるのが村と何かしらの確執があるということ。それを聞き出すのは彼女にとってはよくないことであろう。

 

魔女

 

その事実がもやもやして胸につかえたままだ。か弱く、貧弱で、今にも壊れしまいそうなこの少女は、魔女であるという理由から村の人々から嫌厭されているという事実を認めたくなかった。村長やカレンを始め、村人たちは何故アリスを恐れるのか? その問いは頭の中をぐるぐると回り続ける。

 

悲痛な思いでアリスを見つめながら歩いていると、こちらの視線に気づいたのかアリスはこちらを見て、服の袖をつかんできた。赤い瞳をさらに赤く染めた目がこちらの瞳を心配そうに見つめてくる。

 

「辛い?」

「え?」

「悲しいの?」

 

アリスは他人から見た、自らの状況を気づいていないのだろうか? 込み上げてくるものを押し殺し、不安を与えないように笑顔で答えた。

 

「大丈夫。さ、ご飯食べよう」

「うん」

 

少し照れたようにはにかみながら答えてくれた。その笑顔に応えるように微笑み返し、アリス今までの辛さや寂しさ、そういったものがもう降りかからないようにアリスを見守ろう、そう静かに心の中で誓いを立てた。

 

今回はたくさんの食材や雑貨を買った。思い立って急に準備をしたから足りないものがあるかもしれないが、この量なら食べるに困ることはないだろう。

 

まず燻製。

特に濃い味付けをしたものを中心に持ってきた。鹿の後ろ足を丸々一本。冬の間、ぶどう酒、塩、数種のハーブそして貴重な黒胡椒を混ぜた液に一週間漬け込み、結構な期間冷気で乾燥させたものだ。塩の量を多め調整し、乾燥期間も長い。長期保存用に作っておいたものだから、食べただけで少し喉が乾き、酒が進む。まあ、いわゆる自信作というものだ。

 

他の燻製はイノシシのバラ肉をブロックををぶどう酒と塩で漬けたもの数個。オス鴨を半分にぶつ切りにし、同じく塩漬けにしたものを二つ。

 

硬めのパンは少しの間だけ保存がきくものだ。おかみさんが俺のためにって焼いてくれたもの。そして牛乳。育ち盛りだろうアリスのために持ってきた。あとは簡単な調味料だ色々と必要だろうと思われるもの。今更だが何か甘いものでも持ってくればよかっただろうか。そんなことを考えながらテーブルの上へと並べていく。

 

カバンの中から出てくる食べ物を目をキラキラさせながら見ているアリスの口からは、よだれがすでに糸を引いてテーブルへと垂れていた。その姿がとても微笑ましく、つい吹き出してしまった。

 

急に笑い出した俺を姿を不思議そうに見上げると同時に、自分のよだれに気付きすぐに服の袖でよだれをぬぐい、恥ずかしそうにうつむき口を尖らせながら目だけこちらに向けて言った。

 

「見た?」

「ああ、バッチリ」

「~~~~~~っ」

 

ああ、こういう表情もできるんだなと思わせるぐらいに、表情が変化する。そして今は恥ずかしそうに頬を染めて、口を尖らせている。

 

「ごめん、ごめん。さあ、ご飯にしよう」

「うん!」

 

いつの間にか二人の間の距離がなくなったような気がした。

 

***

 

目覚めのいい朝はいつも気持ちがいいものだ。朝日の光。それに応えるように反射する朝露と鳥の鳴き声。ひんやりとした澄んだ空気を肺いっぱいにに送り込めば身体中にその空気が駆け巡るのを感じる。そんな朝には悪夢を見ていたことを忘れさせてくれる。

 

いや、見ていないのだ。ここ数日不思議と悪夢が忽然と姿を消していた。そんな素晴らしい朝を届けてくれるのは、まだ寝ぼけて目が半開きの小さな魔女、アリスだ。

 

夜寝る時は、彼女の希望と自らの試みもあり二人同じベッドで寝るだが不思議と悪夢を見ることはなかった。

 

アリスはまだ覚めきらない目をこすりながら、小屋のすぐそばを流れる小川へと向かう。小川のそばへ座り、肩から下げていた赤いポシェットから小さな小瓶を取り出した。その小瓶の中身はキラキラと光り輝く小さな粒がたくさん瓶の中をゆっくりと不規則に動き回っていた。アリスは一度その小瓶を胸へと抱きしめ、コルク蓋をあけ、ゆっくりとその光を小川の源泉へと注いだ。その光は一瞬小川全体を照らし、ゆっくりとその光が消えていった。アリスはその小瓶の蓋を閉め、大事そうにポシェットに入れた。

 

彼女の家を訪れるたび見せてくれるその魔法を毎日、毎朝欠かさず行うアリスに何の魔法なのか尋ねると少しだけ切なげな表情を浮かべアリスは言った。

 

「これは豊穣の魔法、お母さんとの約束」

 

自らの母の話をするときは少しだけ悲しそうな顔をするが、話しているときの彼女は思い出を振り返る様な、そのとき過ごしたときを懐かしむ様に話してくれた。

 

「お母さん、病気で起きなくなったの」

「え?」

 

唐突に自らの母の死を語り始めた。

 

「お母さんは魔女だった。だから村にいるのはダメだって言ってた。よくわからなかったけど、私も村に行くのはダメだって言われた。その代わりにお母さんはフェニスを連れてきてくれた。だけどお母さん病気になったとき、約束したの。豊穣の魔法を毎日欠かさずするって。村に大切な人がいるからして欲しいって、村の人たちがすぐ気付いてくれるって」

 

静かに話を聞く俺の手に自分の手を重ねてきた。

 

「私、わからなかった。でもずっと守ってる」

「うん、そうだね」

「私、いい子?」

「うん、いい子だよ、約束を守れるいい子だ」

「えへへへ」

 

照れた様子で頬を染めるアリスはとても可愛らしかった。そして母との思い出を再び語りづづけた。

 

「お母さん病気がひどくなったから、頑張っておまじない覚えたの。いつも『ありがとう』って言うといいって教えてくれた。」

「……」

 

急に黙り込む彼女は俯いて困ったような表情を浮かべ、目尻に涙をためていた。

 

「でもね、一番大事なおまじない忘れちゃったの……、お母さんが起きなくなる前に、私にかけてくれた、教えてくれたおまじない……」

「それってどんなおまじないの?」

「ううん、全然思い出せない。だけど……すごく大切なおまじない。キラキラがいっぱいになるんだって……」

「そっか、でも思い出せるよきっと。大事なおまじないなんだろ?」

「そうかな?」

「そうさ、お母さんが最後に残してくれたおまじないだ。今は忘れてるだけ。大事なおまじないだから、きっとしっかりとしまっててて、置き場所を忘れてるだけだよ」

「……うん、ロビンがそう言うならそうかもしれない、今はちょっと忘れてるだけ」

「きっと見つかるよ」

「うん」

 

しばらくの沈黙の後、アリスは寂しそうに訪ねた。

 

「……また村に行くの?」

「うん、そうだね」

「また、来てくれる?」

「俺が、来なかったことがあったかい?」

「……二回目は遅かった」

「あははは、それは、ごめん」

 

アリスは静かに俺の背中に両手を回して抱きつくように、胸に顔を埋める。村へ戻る時にはいつもこのようにして抱きついてくるのが習慣となっていた。

 

そして、ゆっくりと体を離して、寂しげだが笑顔を向けてくれた。

 

「また、来てくれるおまじない」

「うん、おまじない」

 

そう言ってお互いの小指を絡ませて、一、二、三と三回。手をお互いに上下させる。そして、アリスは指揮棒を振るように指を振る。その軌跡を辿るように光が現れ、すっと俺の手の中に吸い込まれていった。

 

「ロビンが守られますように」

 

その小さな手でぎゅっと、俺の手を握るアリスの手はひんやりとしていた。

 

「じゃ、また来るよ」

「うん、ロビン。ありがと」

 

アリスは光の庭の入り口まで見送ってくれた。振り返ると寂しげだった表情は微笑みに変わり、手を振ってくれる。それをお互いの姿が見えなくなるまで続けた。

 

***

 

ロビンは考えていた。

カレンが言ってくれた言葉が頭の中でこだまし、言葉を繰り返し繰り返しつぶやき、考えていた。

 

ロビン自身がいなくなることで不幸になる人がいる。

 

幸せになってはいけない人なんているわけがない。

 

何度も何度も繰り返し、心に負った傷が少しずつだが癒えていき、今まで押さえつけていた幸せへの欲求が芽生えているのを実感している。

 

だとすればロビン自身がいることで幸せを得ることができるのは一体誰なんだろうか……、そして自らも幸せを得ることができるのなら、自分はどうしたらいいのかを自問する日々が続いていた。

 

村で仕事をしている時も、狩りの時も、考えない時間はなかった。

 

あまりにも深刻な顔をしていたようで、カレンが村を出て行くんじゃないかと心配することもあった。

 

しかし、人生を左右するような大命題の答えを見つけるのはまだ先のように思う。

 

アリスとの生活。

 

少なからず、その生活に満足していた。

村での生活よりもゆっくりと時間を味わうようなその過ごし方が、今まで何かに掻き立てられることを忘れさせてくれていた。

 

少しずつアリスとの時間が増えていくにつれ、アリスが次第に特別な存在へと変わっていくのを実感していた。